取扱説明書(解説書)

「早⾒表:着⾊料」を使うにあたって

1.はじめに
 着⾊料は、⾷品に着⾊する⽬的で使⽤される⾷品添加物である。国・地域により、使⽤基準等の規制は異なるため、国・地域を特定して個別に確認することが重要である。

2.定義
 着⾊料の定義を表1にまとめた。

表1.着⾊料の定義

国・地域 定義(説明文) 出典
日本 食品に色を付与する添加物。
米国 色安定剤、色固定剤、色保持剤などを含む、食品の色や色合いを付与、保存、または強化するために使用される物質。 21CFR§170.3(o)(4)
EU
(含UK )
食品に色を加えるか復元する物質で、食品の天然成分や、通常はそのまま食品として消費されず、食品の特徴成分としても通常使用されない天然源が含まれる。 Regulation (EC) No
1333/2008, Annex I
中国 食品に色を与え、食品の色を改善する物質。 GB2760-2014、付録D
韓国 食品に色を加えたり復元したりする食品添加物。 FOOD ADDITIVES
CODE, I. 2(22)
台湾 食品を着色する物質。 食品添加物手冊
香港 食品をより魅力的に見せ、食品の加工中に失われた色を補う目的、異なる生産バッチ間の一貫性を維持する目的で使用される物質。 香港教育局資料
シンガポール 食品に添加または適用すると、その食品に色を与えることができる物質。 Food Regulations 20
タイ 食品に色を加えるまたは復元する食品添加物。 コーデックスに準拠
ベトナム 食品に色を加えるまたは復元する食品添加物。 コーデックスに準拠
豪州 食品に色を加えるか復元する。 Australia New Zealand
Food Standards Code –
Schedule 14 –
コーデックス 食品に色を加えるまたは復元する食品添加物。 CAC/GL 36-1989

3.名称と分類について
 英名は、各国の法規に記載されている食品添加物の名称を記載している。法規に別名が記載されている場合は、別名も記載している。

4.使用基準について
 使用基準、すなわち、食品添加物・香料の使用が認められている食品と認められている使用量は国・地域ごとに異なるので、必ず、確認しなければならない。
 国際規格と日本とでは、表2のように異なっており、日本は比較的使用基準の制限は少ないが、EU、中国、国際規格に準拠しているタイ、ベトナムは、細かく使用基準を規定している。

表2.国際規格と日本の使用基準の違い

項目 GSFA(食品添加物国際規格) 日本(食品衛生法)
用途 技術的に正当と認められた機能(GSFAの表1表2)でのみ使用可 使用基準に制限記載がなければ用途に制限はない
対象食品 リストに明記された食品分類(GSFAの表1表2)でのみ使用可 使用基準に記載がなければ対象商品に制限はない
最大使用量 食品分類毎に最大使用量(GAFAの表1表2)を規定 使用基準に記載がなければ使用料の上限に制限はない

5.機能と用途 
 同一物質でも用途・機能が国・地域によって異なるので、8.機能分類表を確認いただきたい。

6.基原原料について
 成分規格に基原(何から製造されているか)が記載されている場合は、記載されている基原から製造された食品添加物以外は使用できない。

7.その他の注意点など
 品目、国によっては、食品添加物ではなく、香料として認められている場合がある。
・米国
 成分規格は有償のFood Chemical Codexに収載されており、有償情報は早見表には収載できない。そのため、CFR21に記載されている範囲でのみ早見表に記載している。
 米国には、着色料の認証制度があり、認証免除の着色料もあるが、認証が必要とされている着色料については、認証を受けたバッチの着色料しか使用できない。
https://www.fda.gov/industry/color-certification/color-certification-faqs#:~:text=the%20United%20States.-,How%20to%20Make%20Sure%20Certifiable%20Color%20Additives%20Are%20From%20a,the%20FDA%20certification%20lot%20number
・香港
 食品添加物は、公衆衛生市政条例(第132H章・U章・W章・BD章)に規定されているが、着色料、甘味料、固化剤・pH調整剤・乳化剤・安定剤・増粘剤、酸化防止剤・保存料に限られており、乳化剤・調味料・安定剤・増粘剤等はすべてがリストされているわけではない。香港では食品添加物にINS番号を表示する必要があり、法規に食品添加物とINS番号のリストが載っているが、「この表にある全ての添加物が香港で認められているとは限らない」旨記載されている。第132H章に明記されていない着色料は、早見表では、×としているが、INS番号のある食品添加物については、認められる可能性があるため、香港当局(e-mail:enquiries@fehd.gov.hk)に、所定の情報を添えて、問い合わせるとよい。10日以内に応答するとある。https://www.cfs.gov.hk/english/faq/faq_02.html
 成分規格はないが、JECFA規格、中国規格を参照する可能性がある。
・タイ、シンガポール、豪州
 成分規格がなく、JECFA、FEMA、US、EU等の規格を参照しているので、早見表ではこれらの規格を収載している。
・ベトナム
 成分規格は、機能分類毎にQCVN 4-に公開されているが、公開されていない添加物がある。規格がない場合、JECFA規格が適用される可能性がある。

以上

「早⾒表:乳化剤」の使⽤にあたって

1.はじめに
 乳化剤は、マヨネーズのような油と酢が均一に混合されている食品や缶コーヒーのような乳たんぱくを含むものを加熱する食品などに使用されている。乳化剤の規制は日本と海外とで、定義や使用基準などが異なるため、国・地域を特定して個別に確認することが重要である。
 ちなみに、日本と海外とで異なる点は以下である:①定義、②名称と分類、③使用基準、則ち、使える食品と添加量)。

2.日本、海外10か国、CODEXの定義の違い
 乳化剤の定義を表1にまとめた。日本では、乳化から離型、プロセスチーズに使用する乳化塩も含めた広い定義となる。ただ、日本の定義は「乳化剤とは乳化目的で使う添加物」と循環型定義で、具体的説明が無く、個人が乳化剤となるかならないかを判断できない定義である。米国、中国、台湾および香港では、エマルションの均一化を形成・維持する物質と定義する。EU、韓国、シンガポール、タイ(コーデックス)、ベトナムおよび豪州では、二つ以上の成分を乳化形成・維持する物質と定義する。従って、日本で定義する消泡、浸透、起泡、離形などの機能は、海外では別に定義される。
 日本では、「グリセリン脂肪酸エステル」の機能として、油脂の結晶化防止、デンプンの老化防止さらに、微生物の成育抑制(日持ち向上剤)効果を認めているが、海外では、エマルションの形成・維持の機能しか認めていない。この点、海外に製品を輸出する際は注意が必要となる。

表1.乳化剤の定義

国・地域 定義(説明文) 出典
日本 食品に乳化、分散、浸透、洗浄、起泡、消泡、離型等の目的で使用される添加物。 食品表示基準について
(別添 添加物1-4)
米国 エマルションの成分層の表面張力を変化させ、均一な分散液を形成又は維持することを可能にする物質 21CFR§170.3 (o)(8)
EU
(含UK)
食品中の油と水などの二つ以上の非混和性相の均質な混合物を形成又は維持することを可能にする物質 Regulation no 1333/2008、
Annex I
中国 エマルションの様々な構成相関の表面張力を改善して、均一な分散駅またはエマルションを形成する物質 GB 2760-2014、付録D
韓国 食品中に二相以上の均一なエマルションを形成または維持する食品添加物 Food Additives Code、
I, 2 (16)
台湾 食品中に均一に混合できない原料を乳化させる物質 食品添加物手冊、
(一)食品添加物の分類
香港 加工中および保存中の食品の一貫性を向上させる。
油と水など通常は分離してしまう成分を混ぜる
香港教育局資料
シンガポール 乳化剤は、二つ以上の不混和性物質の均一な分散の形成を補助することができる任意の物質 Food Regulations、
Regulation 21
タイ コーデックスに準ずる 農水調査報告:タイ王国
ベトナム 二つ以上の食品成分の均一なエマルジョンを作成または維持する目的で食品に添加される食品添加物 QCVN 4 – 22: 2011/BYT
豪州 二つ以上の不混和相間のエマルションの形成または維持を促進する Food Standards Code,
別表 14、S14-2
コーデックス 食品の二つ以上の相の均一なエマルションを形成または維持する添加物。 CXG 36-1989、Section 2

 日本で乳化剤の機能に含めている消泡、起泡および乳化塩の機能については、別項目とされているので、それを表2にまとめた。コーデックスとEUは、乳化剤とは別に起泡剤、消泡剤および乳化塩を定義する。米国では、乳化剤とは別に界面活性剤を定義し、ここで起泡剤、消泡剤および分散剤を含める。中国と韓国は、乳化剤とは別に消泡剤を定義している。

表2.起泡剤、消泡剤および乳化塩の定義

国・地域 起泡剤 消泡剤 乳化塩 その他 出典
日本 乳化剤 乳化剤 乳化剤 食品表示基準について
(別添 添加物1-4)
米国 界面
活性剤
界面
活性剤
界面活性剤:可溶化剤、分散剤、洗剤、湿潤剤、再水和促進剤、消泡剤、起泡剤、消泡剤等 21CFR§170.3 定義(o)
EU
(含UK)
Regulation no 1333/2008、
Annex I
中国 起泡剤は亜酸化窒素のみ GB 2760-2014、付録D
韓国 Food Additives Code、
I, 2,
台湾 添加物毎に起泡、消泡を指定 食品添加物手冊、
(一)食品添加物の分類
香港 添加物の機能クラス
シンガポール チーズの個別規格に乳化塩を指定 Regulation 21, 16
タイ No 418, B.E. 2563
ベトナム 回覧No. 24/2019/TT-BYT
豪州 乳化剤:乳化塩を含む Food Standard Code、
別表14
コーデックス CXG 36-1989、Section 2

3.名称と分類について
 日本では、「グリセリン脂肪酸エステル」は、モノ-、ジグリセリド、有機酸誘導体など5種類を含めた物質の名称として登録されている。「ソルビタン脂肪酸エステル」も同様で、ソルビタンモノステアリン酸エステルなど4品目を含む名称として登録されている(表3)。海外では、韓国と台湾を除き、各物質を個別名で表しており、グリセリン脂肪酸エステルやソルビタン脂肪酸エステルは使えない名称である。従って、日本で生産した製品を海外へ輸出する際には、個々の乳化剤を特定し、その名称を表示する必要があるので注意が必要となる。

表3.乳化剤の名称と分類

日本 海外
グリセリン脂肪酸エステル(注1) モノ‐、ジグリセリド
グリセリン酢酸脂肪酸エステル
グリセリン乳酸脂肪酸エステル
グリセリンクエン酸脂肪酸エステル
グリセリンコハク酸脂肪酸エステル
グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル
ポリグリセリン脂肪酸エステル
ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル
グリセリン酢酸エステル
ソルビタン脂肪酸エステル(注2) ソルビタンモノステアリン酸エステル
ソルビタントリステアリン酸エステル
ソルビタンモノラウリン酸エステル
ソルビタンモノオレイン酸エステル
ソルビタンモノパルミチン酸エステル

注1:日本でのグリセリン有機酸脂肪酸エステルは、有機酸が酢酸、乳酸、クエン酸、コハク酸、ジアセチル酒石酸の5つ
注2:日本では、成分規格に合致すれば、表中のステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸以外の有機酸のエステルも使える一方、海外では、収載5品目のみの認可となる。

4.使用基準について
 日本で、乳化剤も使用基準を設定しているものは、クエン酸エチル、ステアロイル乳酸カルシウム、ポリソルベート類であり、グリセリン脂肪酸エステルとソルビタン脂肪酸エステルに使用基準は設定されていない。海外では、モノ-、ジグリセリドおよびその有機酸誘導体を除き、殆どの乳化剤に使用基準が設定され、使用が可能な食品と添加量は制限されている。従って、日本の使用基準で使った加工食品を輸出する際は、輸出先の添加物規制、すなわち、使用基準と合致させる必要があり、輸出前に乳化剤を特定し、海外における使用基準に照らして、問題がないことを確認する必要がある。
 表4に、代表的な国・地域として、米国、EU、中国およびタイの使用基準の一覧を示したので参照すること。詳細については、輸出先を特定して、個々に使用基準を確認することが大切である。
 ちなみに、日本でも生鮮食品には添加物が使用できないが、コーデックスの場合、GMP(必要最小量)で使用可能な添加物でも、使用できない食品群(牛乳、ハチミツ、塩代替品、果汁、コーヒーなど)が設定されている。これらは、GSFAの表3の付表で確認できる。

表4.各国の使⽤基準

乳化剤(指定添加物) 日本 米国 EU 中国 タイ CX
オクテニルコハク酸デンプンナトリウム
クエン酸三エチル
ショ糖脂肪酸エステル
ショ糖オリゴエステル(Ⅰ型、Ⅱ型)
ショ糖グリセリド
ショ糖酢酸イソブチル

|
|
|


×

|
|

×
×
×


×

|
|
ステアロイル乳酸カルシウム
ステアロイル乳酸ナトリウム






プロピレングリコール脂肪暖エステル
グリセリン脂肪酸エステル
モノ‐、ジグリセリド
グリセリン酢酸脂肪酸エステル
グリセリン乳酸脂肪酸エステル
グリセリンクエン酸脂肪酸エステル
グリセリンコハク酸脂肪酸エステル
グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル
ポリグリセリン脂肪酸エステル
ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル
グリセリン酢酸エステル

|
|
|
|
|
|
|
|
|
×




×


×
×
×




×



×
×

×
○/●
○/●
×



×
×




×



×
×




×



×
ソルビタン脂肪酸エステル
ソルビタンモノステアリン酸エステル
ソルビタントリステアリン酸エステル
ソルビタンモノラウリン酸エステル
ソルビタンモノオレイン酸エステル
ソルビタンモノパルミチン酸エステル

|
|
|
|
|
×


×

×




×




×




×




ポリソルベート20
ポリソルベート40
ポリソルベート60
ポリソルベート65
ポリソルベート80

×



×









×








注釈 ○:認可、使用基準有り、●:認可、使用基準なし、×:未認可(或いは使用不可)、|:最上段の名称に含まれる

5.機能と用途
 同一物質でも用途・機能が国・地域によって異なるので、8.機能分類表を確認いただきたい。

6.基原原料について
 成分規格に基原(何から製造されているか)が記載されている場合は、記載されている基原から製造された食品添加物以外は使用できない。

表5.国によって基原(由来原料)が異なる例

国・地域 名称 基原
日本 植物レシチン



卵黄レシチン
アブラナ
大豆
ひまわり

卵黄
国際規格 レシチン 食用油糧種子
動物
米国 レシチン 大豆油
紅花油
コーン油
EU レシチン 動物性・植物性食品

7.その他の注意点など
・米国
 成分規格は有償のFood Chemical Codexに収載されており、有償情報は早見表には収載できない。そのため、CFR21に記載されている範囲でのみ早見表に記載している。
・香港
 食品添加物は、公衆衛生市政条例(第132H章・U章・W章・BD章)に規定されているが、着色料、甘味料、固化剤・pH調整剤・乳化剤・安定剤・増粘剤、酸化防止剤・保存料に限られており、乳化剤・調味料・安定剤・増粘剤等はすべてがリストされているわけではない。香港では食品添加物にINS番号を表示する必要があり、法規に食品添加物とINS番号のリストが載っているが、「この表にある全ての添加物が香港で認められているとは限らない」旨記載されている。第132W章に明記されていない乳化剤は、早見表では、×としているが、INS番号のある食品添加物については、認められる可能性があるため、香港当局(e-mail:enquiries@fehd.gov.hk)に、所定の情報を添えて、問い合わせるとよい。10日以内に応答するとある。https://www.cfs.gov.hk/english/faq/faq_02.html
 成分規格はないが、JECFA規格、中国規格を参照する可能性がある。
・タイ、シンガポール、豪州
 成分規格がなく、JECFA、FEMA、US、EU等の規格を参照しているので、早見表ではこれらの規格を収載している。
・ベトナム
 成分規格は、機能分類毎にQCVN 4-に公開されているが、公開されていない添加物がある。規格がない場合、JECFA規格が適用される可能性がある。

以上

「早⾒表・⽢味料」を使うにあたって

1.はじめに
 甘味料は、食品に甘味を付与する機能を持つ物質と位置付けされている。しかし、国・地域により、砂糖を代替する物質や合成(人工)品に限定していたりするため、国・地域を特定して個別に確認することが重要である。

2.定義
 甘味料の定義を表1にまとめた。日本の定義は表示目的で単純であるが、対象となる甘味物質は広い。海外では、添加物の機能・役割を明確にする定義があり、甘味物質の対象や使い方を規定している。
 米国では、栄養性甘味料と非栄養性甘味料に分けており、甘味物質の熱量に注意が必要である。EUでは、使う対象に卓上甘味料を含めている。中国および韓国の定義は日本と類似し、対象範囲は広い。香港、シンガポール、ベトナムおよび豪州は、砂糖代替として使用を限定、あるいは、甘味料にならないものを明記する。コーデックスでは、単糖類(ブドウ糖、果糖等)および二糖類(ショ糖、マルトース等)を甘味料から除いているが、日本では、単糖類のブドウ糖、果糖は食品だが、リボース、ラムノールは添加物、二糖類のショ糖、マルトースは食品だが、トレハロースは添加物として、明確になっていない。

表1.⽢味料の定義

国・地域 定義(説明文) 出典
日本 食品に甘みを与える物質 食品表示基準について
(別添 添加物1-4)
米国 非栄養甘味料 : 甘味容量の等価単位当たり、ショ糖の熱量の2パーセント未満の物質
栄養甘味料 : 甘味容量の等価単位当たり、ショ糖の熱量の2パーセントを超える物質
21CFR§170.3 (o)(19)&(21)
EU
(含UK)
食品または卓上甘味料に甘味を与えるために使用される物質 Regulation no 1333/2008、
Annex I
中国 食品に甘味を与える物質 GB 2760-2014、付録D
韓国 食品に甘味を与える食品添加物 Food Additives Code、
I, 2 (1)
台湾 食べ物に甘みを与える物質 食品添加物手冊、
(一)食品添加物の分類
香港 糖類や他の炭水化物、多価アルコールを含まない甘味を持つ化合物 Sweeteners in Food
Regulations (Cap.132)
シンガポール 甘味を与えるために砂糖の代わりに食品に添加される物質を指すが、アスパルテーム、砂糖、炭水化物又は多価アルコールは含まれない Food Regulations、
Regulation 18
タイ コーデックスに準ずる 農水調査報告:
タイ王国
ベトナム 食品に甘味を加える目的で使用される、天然由来の砂糖以外の食品添加物(人工甘味料) QCVN 4-8: 2010/BYT
豪州 利用可能な熱量に大きく寄与することなく、食品中の砂糖によって通常提供される甘味を置換する Food Standards Code,
別表 14、S14-2
コーデックス 食品に甘味を与える食品添加物(単糖類または二糖類を除く) CXG 36-1989、
Section 2

3.名称と分類について
・高甘味度甘味料と低甘味度甘味料
 甘味料は、甘味強度により高甘味度甘味料と低甘味度甘味料に分類できる。高甘味度甘味料とは、砂糖の数百倍、数千倍の甘味度を有するもので、甘味を得るためには少量の添加で済む。このため、使用した甘味料からのカロリー寄与は低い。一方、低甘味度甘味料は砂糖の甘味を1とした場合、0.5~1.0程度の甘味度を有するものを指し、従って、甘味料として使用した場合のカロリー寄与は砂糖に近い。

図1.甘味強度による分類

図1.甘味強度による分類

・炭水化物、糖質、糖類など
 糖質とは、炭水化物から食物繊維を除いたもので、糖類、オリゴ糖類、糖誘導体、糖アルコール類、多糖類を指す(図2)。香港およびシンガポールは、甘味料の定義で炭水化物を除くとしており、図2の糖質は含まれない。欧州(表示規則no 1169/2011)、韓国(表示規則:Enforcement Regulations of the Act on Labeling and Advertising of Food)、香港(Cap. 132 甘味料)およびコーデックス(CXG 36-1985)は単糖と二糖を除くと定義しており、ブドウ糖(グルコース)や果糖(フルクトース)、乳糖、ショ糖、トレハロースなどは除かれる。また、ベトナムは、甘味料は人工甘味料と定義するため、糖質は除かれる。糖質には多糖類(デンプン、ガラクタン、フラクタン、デキストリンなど)も含まれるが、味はないので甘味料ではなく、食品扱いとする国・地域が殆どである。しかし、タイは、マルトデキストリンを添加物としている。

図2.糖質の分類

図2.糖質の分類

・糖アルコール
 糖アルコールとは、還元糖のカルボニル基が還元されてヒドロキシル基になった構造を持ち、微量だが植物や動物の生体内に存在するほか、微生物によっても生成され、自然界に広く分布している。
 日本と米国以外は、表2に示した糖アルコールすべては添加物としていたが、日本ではエリスリトールとラクチトールは食品である。米国では、マルチトールとラクチトールは添加物でもGRAS(一般に安全と認められる)物質でもなく、法的位置づけは付与されていない。

表2.糖アルコールの位置づけ

ソルビトール エリスリトール キシリトール マンニトール マルチトール ラクチトール
日本 食品扱い 食品扱い
米国
EU
(含UK)
中国
韓国
台湾
香港
シンガポール
タイ
ベトナム
豪州
コーデックス

注釈:○:添加物・甘味料、―:現地で確認が必要

4.使用基準について
 使用基準、すなわち、食品添加物・香料の使用が認められている食品と認められている使用量は国・地域ごとに異なるので、必ず、確認しなければならない。
 国際規格と日本とでは、表3のように異なっており、日本は比較的使用基準の制限は少ないが、EU、中国、国際規格に準拠しているタイ、ベトナムは、細かく使用基準を規定している。

表3.国際規格と日本の使用基準の違い

項目 GSFA(食品添加物国際規格) 日本(食品衛生法)
用途 技術的に正当と認められた機能(GSFAの表1表2)でのみ使用可 使用基準に制限記載がなければ用途に制限はない
対象食品 リストに明記された食品分類(GSFAの表1表2)でのみ使用可 使用基準に記載がなければ対象商品に制限はない
最大使用量 食品分類毎に最大使用量(GAFAの表1表2)を規定 使用基準に記載がなければ使用料の上限に制限はない

5.機能と用途
 同一物質でも用途・機能が国・地域によって異なるので、8.機能分類表を確認いただきたい。

6.基原原料について
 成分規格に基原(何から製造されているか)が記載されている場合は、記載されている基原から製造された食品添加物以外は使用できない。

7.その他の注意点など
 品目、国によっては、甘味料ではなく、香料として認められている場合がある。
・米国
 成分規格は有償のFood Chemical Codexに収載されており、有償情報は早見表には収載できない。そのため、CFR21に記載されている範囲でのみ早見表に記載している。
・EU
 単糖であるL-アラビノース、D-キシロース、L-ラムノース、D-リボースは、表示規則上、単糖・二糖類は糖類(sugars)と表示できるEUについては、早見表では、食品扱いとして〇としているが、正確を期すためには輸入業者、大使館等へ確認するのが望ましい。
・韓国
 キシロースとリボースは添加物リストに収載されているが、添加物リストにないアラビノースとラムノースについては、EU同様、表示規則上、単糖・二糖類は糖類(sugars)と表示できるので、早見表では、食品扱いとして〇としている。正確を期すためには輸入業者、大使館等へ確認するのが望ましい。
・香港
 食品添加物は、公衆衛生市政条例(第132H章・U章・W章・BD章)に規定されているが、着色料、甘味料、固化剤・pH調整剤・乳化剤・安定剤・増粘剤、酸化防止剤・保存料に限られており、乳化剤・調味料・安定剤・増粘剤等はすべてがリストされているわけではない。香港では食品添加物にINS番号を表示する必要があり、法規に食品添加物とINS番号のリストが載っているが、「この表にある全ての添加物が香港で認められているとは限らない」旨記載されている。第132U章に明記されていない甘味料は、早見表では、×としているが、INS番号のある食品添加物については、認められる可能性があるため、香港当局(e-mail:enquiries@fehd.gov.hk)に、所定の情報を添えて、問い合わせるとよい。10日以内に応答するとある。https://www.cfs.gov.hk/english/faq/faq_02.html
 成分規格はないが、JECFA規格、中国規格を参照する可能性がある。
・タイ、シンガポール、豪州
 成分規格がなく、JECFA、FEMA、US、EU等の規格を参照しているので、早見表ではこれらの規格を収載している。
・ベトナム
 成分規格は、機能分類毎にQCVN 4-に公開されているが、公開されていない添加物がある。規格がない場合、JECFA規格が適用される可能性がある。

以上

「早見表:調味料」を使うにあたって

1.はじめに
 調味料は、食品に味・風味を付与、増強する目的で使用される食品添加物である。国・地域により、使用基準等の規制は異なるため、国・地域を特定して個別に確認することが重要である。台湾には調味料という分類があるが、台湾を除く外国の場合、日本とは異なり、食品添加物には調味料という分類はなく、日本の調味料は風味増強剤または香料に分類されることがある。

2.定義
 調味料(台湾以外の外国の場合は風味増強剤)の定義を表1にまとめた。

表1.調味料/風味増強剤の定義

国・地域 定義(説明文) 出典
日本 食品の製造又は加工の工程で,味の付与又は味質の調整等味覚の向上又は改善のために使用される添加物(甘味料、酸味料、苦味料を除く)。 食品表示基準について
(別添 添加物1-4)
米国 食品自体の特徴的な味や香りを与えることなく、食品の元の味や香りを補足、強化、または変更するために添加される物質。 21CFR§170.3(o)(11)(1
EU
(含UK)
食品の既存の味および/または匂いを増強する物質。 Regulation (EC)
No 1333/2008, Annex I
中国 食品本来の風味を補ったり、高めたりする物質。 GB2760-2014、付録D
韓国 食品の既存の味および/または匂いを強化する食品添加物。 FOOD ADDITIVES CODE,
I. 2(30)
台湾 食品に酸味、甘味、甘み、うま味を与える物質。 食品添加物手冊
香港 食品の味を高め、改善する目的、食品の加工中に失われた風味を補う目的で使用される物質 香港教育局資料
シンガポール 食品の風味を向上または改善できる物質。 Food Regulations 23
タイ 食品の既存の味および/または匂いを強化する食品添加物。 コーデックスに準拠
ベトナム 食品の既存の味および/または匂いを強化する食品添加物。 コーデックスに準拠
豪州 食品の既存の味や匂いを強化する。 Australia New Zealand
Food Standards Code –
Schedule 14 –
コーデックス 食品の既存の味および/または匂いを強化する食品添加物。 CAC/GL 36-1989

3.名称と分類について
 英名は、各国の法規に記載されている食品添加物の名称を記載している。法規に別名が記載されている場合は、別名も記載している。

4.使用基準について
 使用基準、すなわち、食品添加物・香料の使用が認められている食品と認められている使用量は国・地域ごとに異なるので、必ず、確認しなければならない。
 国際規格と日本とでは、表2のように異なっており、日本は比較的使用基準の制限は少ないが、EU、中国、国際規格に準拠しているタイ、ベトナムは、細かく使用基準を規定している。

表2.国際規格と日本の使用基準の違い

項目 GSFA(食品添加物国際規格) 日本(食品衛生法)
用途 技術的に正当と認められた機能(GSFAの表1表2)でのみ使用可 使用基準に制限記載がなければ用途に制限はない
対象食品 リストに明記された食品分類(GSFAの表1表2)でのみ使用可 使用基準に記載がなければ対象商品に制限はない
最大使用量 食品分類毎に最大使用量(GAFAの表1表2)を規定 使用基準に記載がなければ使用料の上限に制限はない

5.機能と用途
 同一物質でも用途・機能が国・地域によって異なるので、8.機能分類表を確認いただきたい。

6.基原原料について
 成分規格に基原(何から製造されているか)が記載されている場合は、記載されている基原から製造された食品添加物以外は使用できない。

7.その他の注意点など
 品目、国によっては、食品添加物ではなく、香料として認められている場合がある。
・米国
 成分規格は有償のFood Chemical Codexに収載されており、有償情報は早見表には収載できない。そのため、CFR21に記載されている範囲でのみ早見表に記載している。
・香港
 食品添加物は、公衆衛生市政条例(第132H章・U章・W章・BD章)に規定されているが、着色料、甘味料、固化剤・pH調整剤・乳化剤・安定剤・増粘剤、酸化防止剤・保存料に限られており、乳化剤・調味料・安定剤・増粘剤等はすべてがリストされているわけではない。香港では食品添加物にINS番号を表示する必要があり、法規に食品添加物とINS番号のリストが載っているが、「この表にある全ての添加物が香港で認められているとは限らない」旨記載されている。調味料の場合、第132章に明記されていないため、INS番号のある食品添加物、JECFA評価のある香料については、早見表では、〇としているが、香港当局(e-mail:enquiries@fehd.gov.hk)に、10日以内に応答するとあるので、所定の情報を添えて、問い合わせる必要がある。https://www.cfs.gov.hk/english/faq/faq_02.html
 成分規格はないが、JECFA規格、中国規格を参照する可能性がある。
・タイ、シンガポール、豪州
 成分規格がなく、JECFA、FEMA、US、EU等の規格を参照しているので、早見表ではこれらの規格を収載している。
・ベトナム
 成分規格は、機能分類毎にQCVN 4-に公開されているが、公開されていない添加物がある。規格がない場合、JECFA規格が適用される可能性がある。

以上

更新日:2024.02.21